南イタリア、カンパーニャ州の銘醸地ラピオから届いた「フィラドーロ フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ 2022」。標高490mの冷涼なテロワールで育まれたこの一本は、心に寄り添うような清らかな果実味と、大地を感じさせるミネラルが魅力です。日常に小さな物語を添える、特別な白ワインの世界へご案内します。
キャッチコピー
黄金の滴に閉じ込められた、りんごの余韻。自然の吐息をそのままグラスに注ぎ込む、静寂の白ワイン。
基本情報
- HWYS評価⭐️⭐️⭐️★
- お酒名:フィラドーロ フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ 2022
- 原語表記:FILADORO Fiano di Avellino
- 酒類:白ワイン
- 原産国:イタリア
- 原産地域:カンパーニャ州 アヴェッリーノ県 ラピオ
- アルコール度数:13.5%
- 品種:フィアーノ 100%
- 生産者:フィラドーロ(Filadoro)
生産者・蔵元の背景とストーリー
フィラドーロは、カンパーニャ州アヴェッリーノ県の山間に位置する小さな村、ラピオ(Lapio)で丁寧にワイン造りを行うワイナリーです。標高約490mという高地に広がる畑は、山々と谷に挟まれ、昼夜の大きな寒暖差と清らかな冷涼な風という、フィアーノ種にとって理想的な環境を享受しています。
彼らの歴史は、1994年に畑の改良から始まりました。家族経営という小規模な体制を守りながら、2008年からは自社での瓶詰めを開始し、その土地の個性をそのままボトルに封じ込めることに心血を注いでいます。現在、約5ヘクタールの畑では有機栽培が実践されており、持続可能な農業を通じて「土地の声」を聴くことを大切にしています。

一般的評価・製法・こだわり
フィアーノ・ディ・アヴェッリーノは、その歴史が古代ローマ時代にまで遡ると言われるカンパーニャ州を代表する白ワインの最高峰です。フィラドーロのこだわりは、過剰な介入を避け、ブドウ本来のポテンシャルを最大限に引き出すことにあります。
収穫はすべて手摘みで行われ、厳選されたブドウのみを使用。醸造においては、あえて木樽のニュアンスを抑え、ステンレススチールタンクでの温度管理醗酵を選択しています。特筆すべきは、醗酵後の「澱(おり)熟成(fine lees)」の工程です。約2ヶ月間、澱と接触させることで、フレッシュな酸を保ちながらも、ワインにふくよかな厚みと豊かな旨味を与えています。この手仕事こそが、透明感と奥深さが共存するフィラドーロ独自のスタイルを築いているのです。
実飲感想
グラスを手に取った瞬間、コルクから漂う香りが期待感を高めてくれます。それは青りんごや焼きりんごといったステレオタイプな果実ではなく、どこか日本の懐かしいりんごの缶詰を彷彿とさせる、優しく甘やかな香調です。
液面は、注ぎたては白く透き通っているものの、時間の経過とともに夕陽を思わせる美しい黄金色へと深まっていきます。光を反射してキラキラと輝く様子は、まるで山あいの静かな滝の水面を眺めているかのよう。この時点で、すでにワインが持つ豊かなエネルギーと生命力を感じることができます。
口に含んだ第一印象は、秋田の「ねぶたりんごジュース」のような、驚くほど親しみやすく、喉をすっと通り抜ける爽快感。しかし、そこからがこのワインの真骨頂です。舌の上で味わいが開くと、水の玉の中に香りのヴェールがもう一枚隠れているような、立体的で層の厚い風味が広がります。

喉と口の中間あたりで、ふわりと香りが漂う不思議な瞬間があります。それはまるで、深い霧の中からゆっくりと狐が現れるような幻想的な体験。不思議なことに、どこか「ロシア的」な寒さと静けさ、そして凛とした透明感を感じるのです。
喉越しは、冷たいというよりは「ひんやりとしっとりと絡みつく」という表現がふさわしいでしょう。後味に一切の雑味や引っかかりがなく、まるで冬の終わりに雪解けの沢を覗き込むときのような清らかさがあります。時間が経つにつれ、香りは落ち着きを見せ、代わりにスッキリとしたミネラル感が際立っていきます。季節の移ろいや自然の息吹をそのままグラスに閉じ込めたような、静寂に満ちた一本です。
総評・おすすめのペアリング
このワインは、派手な強さよりも「穏やかな勢い」と「確かな個性」を求める方に最適です。甘やかさと透明感のバランスが絶妙なため、塩味を利かせた料理との相性が抜群です。
特におすすめしたいのは、岩塩を軽く振ったモッツァレラチーズや、完熟トマトを使ったカプレーゼ。素材のシンプルな旨味とワインの透明感が合わさることで、お互いの良さを引き立て合い、食卓がより立体的な楽しみに包まれます。白身魚のカルパッチョや、アスパラガスなどの春の野菜とも相性が良く、6〜8℃程度に冷やすと、その輪郭がより鮮明に描き出されます。
まとめ
フィラドーロ フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ 2022は、飲むたびに情景が浮かび、日常の喧騒から遠く離れた場所へ旅をさせてくれるような一本です。派手さはありませんが、幼い頃の記憶を呼び起こすような懐かしさと、自然が宿る純粋な美味しさがあります。日々の疲れを癒したい夜や、大切な人と静かに語り合う時間に、ぜひこの黄金色の物語を添えてみてください。
